Most Powerful Open Source ERP

オフライン対応HTML5アプリと中央ERP5サーバーで20社の購買生産販売データを管理する

ゴム産業界の国際的グループであるGKRは期間三ヶ月で模範的な購買-生産-販売管理システムを構築し、中国と東南アジアの14拠点に導入しました。中央ERP5サーバーに簡単に使えるオフライン対応HTML5アプリを組み込むことでシステムの短期導入を達成しました。
  • Last Update:2016-08-18
  • Version:001
  • Language:ja

ゴム産業界の国際的グループであるGKRは期間三ヶ月で模範的な購買-生産-販売管理システムを構築し、中国と東南アジアの14拠点に導入しました。中央ERP5サーバーに簡単に使えるオフライン対応HTML5アプリを組み込むことでシステムの短期導入を達成しました。

顧客企業概要
社名
GKR(広東省広墾橡膠集団有限公司) グループ GDNKグループ(広東省農墾集団公司)の子会社
従業員数 1000人以上 設立 2002
拠点 中国17箇所、東南アジアに11箇所 ウェブサイト http://www.gdgkr.com

単一システムで14の拠点を管理

設立以来13年間、GKRのビジネスは早い成長を続け、中国国内と東南アジアにゴム植林、加工、販売、研究開発のたくさんの新しい拠点を築きました。しかしながら、会計を除けば、全ての拠点はいまだに表計算ソフトで日常業務(材料の購買や在庫管理、生産や販売実績)を管理してデータを広州のGKR本社に送って報告をする状態でした。次第にデータの管理は複雑になりすぎて頻繁にデータの根拠が分からなくなりました。そこでGKR幹部たちはERPの導入を決めました。はじめに全ての拠点の日常業務のデータを一括管理して矛盾がない正確なレポートを作ることを目指し、次にそのシステムを拡張して完全な機能を持つERPにして業務のやり方をGKRの驚異的な成長に合ったものにすることを目指します。

14個の独立したERP群をまとめるか、単一の中央ERPか?

14の生産拠点と販売会社をまたがる期末レポートを作成するためにデータ収集管理システムが2015年11月より前に使えるようになって全拠点のユーザーたちが日常業務を入力できるようになる必要がありました。Nexediは5月に話を聞き、プロジェクトは7月の半ばに正式にはじまりました。そのときに3ヶ月しか時間が残されていませんでした。

GKRは当初中国と東南アジアに点在する拠点ごとにERPを設置して使うつもりでした。それは拠点の多くが僻地にあり本社とのインターネットを介した通信の品質に問題があると信じられていたからです。拠点ごとに独立したサーバーを導入してその拠点のユーザーに日常業務のデータを入力させ、全拠点の別々のERPサーバーのデータを広州にある本社の中央システムに同期させる方法が求められました。ERP5はコンフィギュレーターというツールを使って簡単に14拠点に自動的にセットアップでき、メンテナンスも可能です。しかしGKRの固有の要件が自動データ収集同期と同時に全拠点にまたがって均一のデータが作られることを担保する必要があったため、限られた時間しかないGKRにとってリスクが高すぎる方法だとNexediには分かっていました。この方法は全拠点にサーバーを設置して設定し、中央サーバーと通信させる必要があり、そしてこの回線を最適化して、それからスタッフに使い方の訓練をする必要があります。それに加えてプロジェクト特有の機能的要件もあります。これら全ての作業は必要な予算と時間と人的資源の観点から失敗すると思われました。

約15年の複雑なERPソリューションを提供してきた経験からNexediはそれに代わって単一の中央ERPサーバーをオフライン対応のHTML5アプリと一緒に使ってデータをまとめる方法を提案しました。オフライン対応のHTML5アプリは中央ERPサーバーにデータを同期して、中央ERPサーバーは同期されて集まった全データを処理して管理し、最終的にビジネスインテリジェンスのレポートを作るための構造化されたデータを出力します。GKRは結局はこの方法を受け入れました。なぜならこの方法はより単純でプロジェクト費用が安く済み、14個の独立したサーバー群をまとめるよりも高い効率性を発揮すると見込めたからです。結果的にNexediは11月よりも前にシステムを引き渡すことに成功し、予算内で全てのプロジェクトの目標を達成しました。

14拠点で計20人が使うデータ収集システムを3ヶ月で作る

インテグレーター Nexedi - Nayu Software Technology (上海) Ltd
使用主機能
ERP5 Trade, Item 開発期間
3ヶ月
ユーザー数 20 拠点数 14

プロジェクトの目標を期限内に達成してデータ獲得収集システムの性能を担保するためにGKRは中央ERPという方法を受け入れなければなりませんでした。プロジェクトの計画時にGKRとNexediは以下のマイルストーンを定義しました:
  • M + 1ヶ月 : 拠点がデータ入力に使うHTML5アプリとGKR本社が使う中央ERP5サーバーのプロトタイプを作成する
  • M + 2ヶ月 : 拠点用のHTML5アプリを作成する
  • M + 3ヶ月 : システムを完成させて利用可能にし、データを出力する
プロジェクトはGKRの小さなチームに率いられました。チームにはGKRから副総経理、プロジェクトマネージャ、セールスマネージャー、ITスタッフが参加し、Nexediからは経験豊富なコンサルタントとエンジニア、アシスタントが参加しました。 最も重要だと分かっている事柄に注力して実装しました。GKR側でプロジェクト専属のチームがいたことは成功の要素の一つでした。なぜなら要件は随時チェックされて必要であれば外されたからです。例えば、GKRのデータ管理の業務は実装時には明確に定義されていませんでしたのでやらなければいけない要件から外されました。これによってNexediは本当に大事な機能に集中することができました。

データ収集のためのカスタムのオフライン対応HTML5アプリ

中央ERPサーバーのユーザーインターフェースとしてのカスタムのオフライン対応HTML5アプリを開発することはGKRプロジェクトにとってたくさんの利点があることが分かりました。

単純なユーザーインターフェースで訓練が要らない

アプリはできるだけ単純になるように作りました。そのおかげでユーザーはすぐに使い方が分かります(LINEのように)。データの種類は最低限必要なものに限っていて、日次の購買と生産、販売データを入力するだけです。それで本番稼動のときに14拠点の20人のユーザーは簡単な説明のビデオをみるだけで1日目からデータを入力できるようになりました。

ブラウザで動くアプリ - サーバーは不要、どこでも動く

ブラウザで動くオフライン対応のHTML5アプリがあれば支社の拠点でサーバーを入れたり保守したりする必要がありません。Chromeウェブブラウザーが動くデバイスがあれば十分です。アプリは最初にサーバーからダウンロードするときに必要なファイルを全部ダウンロードして保存するので、次に使うときにはネットワークが要りません。このアプリにはERP5とデータを交換するコア機能を持ったJavaScriptのファイルが入っていてネットワークに繋がっていないときにでもウェブブラウザーの中で動かせます。レスポンシブに対応しているので、アプリはスマホでもタブレットでもPCでもデバイスに応じた画面で使えます。そのため、支社の拠点のネットワークが故障しているときであっても日次のデータ入力はスマホでできて、スマホの2G/3G/4Gネットワークを使って中央のERP5サーバーに送れます。

オフライン対応HTML5アプリ - ネットワークの問題とは無関係

データ収集のための全てのモジュールはオフライン時の運用を想定して設計されているので、どんなときにでもデータの入力ができます。中央サーバーにアクセスしないといけない場合は限られていて本社にある中央サーバーとデータ交換をするとき(中央サーバーにある最新データのダウンロードと自分が入力したデータのアップロード)だけです。ですからネットワークが一時的に使えなくなっていても日常業務の妨げにはなりません。

NexediはさらにGrandenetアプリケーションデリバリーネットワークを実装して広州にあるGKRの中央サーバーへの接続性を高めました。Grandenetは中国やタイ、インドネシアで今だに頻発するインターネットルーティングの不安定性に関わる問題の解決の手助けになります。3ヶ月の観察の結果、Nexediはネットワークのダウンタイムを観測しましたが、それが最も僻地にいるユーザーであっても中央サーバーとデータを同期することの妨げにならなかったことを確認しました。良い副作用として、このプロジェクトのGrandenetとオフラインHTML5アプリの組み合わせがNexediの「完全にオンラインのグローバルERP手法」を従来のウェブベースのソリューションが失敗するようなネットワーク環境で使えるようにするための重要な要素でした。

中央ERP5サーバーでデータ管理

クラウド上の単一ERP – 時間とお金を節約

インフラの要件を単一の中央ERP5サーバーのままにした上でNexediはさらに時間とお金を節約するためにクラウドを使って最初のGKRサーバーを管理することを提案しました。完全にオープンソースのソリューションなのでERP5とシステムを配置構成する仕組みを含めた全体をいつでも簡単に必要であればオンプレミスに移動させることができます。

単純化されたデータ同期機能 – 効率的なデータ転送を担保

オフライン対応HTML5アプリと中央ERPのデータ同期機能はjIOフレームワークを使ってJavaScriptで実装しました。オフライン対応HTML5アプリでこの機能を実装して保守するのは、複数の独立したERPサーバーを同期させるのに比べてとても簡単で早くできました。加えて、この方法はマスターデータ管理を即時行うことを強制することにもなり、マスターデータ管理が疎かになるのを防ぎました。

中央集権的データ管理 – 強化された中央集権とデータ品質

GKR本社の重要なユーザーは支社の拠点で入力されるデータの品質を管理する担当者です。彼らが入力されたデータを確認し、間違いがあれば修正して、きれいになったデータがレポート作成に使われます。Nexediの遠隔サポート付きの訓練を1日行っただけでデータ品質管理担当者を養成できました。データ品質管理者の育成はどんなERPシステムにとっても長期利用の観点で重要な行程です。

履歴 – データの追加更新を追跡可能にする

中央集権的ERP5を使ってデータを管理することの強みの一つは全てのデータの追加更新とユーザーのワークフロー操作の履歴を完全に追えることです。全てのレコードは作成日時、更新日時、実行者、元のデータ、変更箇所を記録しています。これによってデータの信証性と正確さを簡単に確認、監視できます。

少ないほうがいい

現在のGKRのERPの実装はERP5の標準実装とあまり変わらず、違うところは少ないです:

  • カスタマイズしたカテゴリー定義 - GKRとその支社に固有のデータと分類法に基づく
  • カスタマイズしたアイテム - HTML5アプリを使ってユーザーが入力したデータに基づく
  • カスタマイズしたワークフロー - HTML5アプリから送られたユーザー入力データオブジェクトからERP5オブジェクトを中央サーバーで作る
  • カスタマイズしたセキュリティー - ユーザーが属している支社のデータだけにアクセスできるようにする
上記のカスタマイズだけに注力して全部をGKRのためにカスタマイズしないことでNexediのエンジニアは開発時間を少なくでき、本当に重要な機能をリリース後に改良したり、日常業務の中で発見した本当に必要な業務の効率化のための追加機能を作ることができました。

ネットワークの問題? 問題じゃないです!

GKRが最初に拠点ごとにそこだけで使うERPを導入することを要求したのは多くの拠点でネットワークの問題があったからでした。これは大量の日次データを入力するときに問題になる可能性が高いと考えられていました。しかし実際にはネットワークの状態はそこまで大きな問題ではありませんでした。中国や東南アジアの田舎ではインターネットが使えないというのは10年前は本当だったのかもしれません、しかし今では東南アジアの至るところでインターネットを使うことができ、モバイル通信はおそらく世界中で最新鋭の技術です。中国ではもしかすると4Gを使ったインターネットアクセスは他のどの国よりも良いかもしれません。未だにインターネット接続が上手くいかないところではスラーヤの衛星通信が簡単に悪天候下でも使えます。

中国国内のインターネットアクセスの本当の問題は通信経路に関することです。自分のインターネット接続回線は調子が良くても相手のサーバーには繋がらないということです。この問題はこのプロジェクトの期間中に何度もみられました。中国で一番インターネットが速い雲南省で香港や東京、北京のサーバーには繋がるのに広州のサーバーにはどうしても繋がらないというようなことです。

このネットワーク経路の問題は「Grandenet」のアプリケーションデリバリーネットワーク(ADN)という技術で解決しました。雲南省で起きた問題の場合、広州には直接接続できないので北京を経由することで広州にあるGKRサーバーに接続可能になりました。このように経路をGrandenetのADNが自分で構成するので、中国でよくみられるネットワーク問題は経路の問題であることが多いので、GrandenetのADNで問題がなくなりました。これでGKRにはネットワークの問題はなくなりました。

安定したネットワークがなくてデータ入力できない?オフライン対応HTML5アプリを使おう

先に述べたようにオフライン対応HTML5アプリでjIO同期技術が日次のデータ入力で重要な購買、在庫、生産、販売モジュールをオフライン対応にするのに使われています。ネットワークの状態がとても悪いいくつかの工場ではユーザーは一日のはじめにアプリを使う前にGKR本社が更新しているデータをダウンロードするときと、彼らが日次のデータ入力を終えたあとにそれを本社の中央サーバーにアップロードするときだけネットを使っています。有線のインターネット接続の調子が一日中悪いときでもユーザーは2G,3G,4Gモバイル回線で中央サーバーに接続してデータ交換をすることができます。

安定したネットワークがなくてデータを転送できない? GrandeNetで一番接続しやすいフロントエンドをみつけよう

ユーザーがオフライン対応HTML5アプリを使って日次データの入力をしても、中国や東南アジアの14拠点にいるユーザーは入力したデータを本社の中央ERPに転送しなければなりません。複数の可能な接続先を用意してデータ転送の確実さを担保するために、NexediはさらにGrandenetのネットワーク最適化サービス(Grandenet-re6st)を中国国内で利用することを提案しました。なぜならGrandenetは中国とその国外との安定した通信を保証する認可されたサービスだからです。IPv6を基にしたADNでNexediが導入したシステムを使っていて、ヨーロッパやオセアニア、アメリカとの安定した通信を保証します。常にネットワークの接続性を監視していて、いつでもユーザーにとって最良の接続先を使う仕組みです。このADNは中国のある気象局ですでに使われていて中国政府から正式な免許を受けています。

異なる複数の言語のユーザーたちがいる? オープンソースが解決します

オープンソースであることで、ERP5のユーザーは自分自身で翻訳を足してUIを変更することができます。現在のところ、HTML5アプリは中国語と英語とタイ語に対応していて、数時間あれば別の新しい言語に対応できます。中央ERP5サーバーは中国語と英語に対応していて(タイ語は必要でなかったです)これも別の言語の対応は簡単です。

毎月レポートの形式が変わる?カスタマイズの構造化データを出力してどんなBIレポートにも対応

カスタマイズの構造化データを出力すればGKRがレポートの作成でどんなものが必要になっても大丈夫です。レポートの形式や種類はマネージャーや経営幹部の要望やGKRのビジネスの変化によって変わります。例えば、ひとたび生産工程が変われば製造経費の計算方法が変わるかもしれず、そうするとERP5から出力する基データも変わらなくてはなりません。

レポート作成を柔軟にするために、Nexediはいくつかのレポート用のデータベーステーブルを作って、基礎データを汎用的に取り出せるようにしました。GKRはこれを使ってサードパーティーのレポート作成ツールにデータを読み込ませます。

未来のGKR ERPシステムのためのHTML5アプリの前途有望な機能

HTML5アプリと中央ERP5サーバーの組み合わせでGKR ERPはとても将来性のあるシステムになります。レポートモジュールはマネージャーと経営幹部のために即席のレポートを表示できます。検索結果に応じたレポートならオンラインのときだけに使えて、日次のレポートならオフラインのときでも使えます。レポートモジュールは他の用途にも使えるでしょう、例えば、入力されたデータの品質をチェックするための承認作業のため、また購買や販売や価格訂正に応じた在庫調整のためにです。新しいモジュールを加えることもできるでしょう。例えば、返品を管理するためのモジュールや実地棚卸の結果を記録するモジュールです。現在は中央ERPサーバーがやっている仕事を必要に応じてHTML5アプリでできるようにすることも可能です。

結論: オフライン対応HTML5アプリと中央ERP5サーバーの組み合わせでGKRは完全なERPシステムを構築でき、従来のやり方でERPを各拠点に導入して時間とお金を無駄にしなくて済みました。今回構築したシステムはGKRの日常業務に必要な重要な機能を持った強力で障害に強く使い勝手がよいものになりました。

学んだこと

  1. オフライン対応HTML5アプリと中央ERP5サーバーの組み合わせは導入とユーザーの訓練の時間を大幅に短縮し、開発者は本当に必要で重要なことに注力できた。
  2. 本プロジェクトのための少人数のチームを作って本当に重要な事項をはっきりさせ要件を精密に定義できた。本当に重要なことを実装し、新しい要望の一覧を随時管理して本当に重要なことしかやらないことで期日どおりにシステムを導入できてプロジェクトの管理の手間も少なくて済んだ。
  3. HTML5アプリでオフライン機能とオンライン機能を切り分けてERP5の新しいモバイル用UIと組み合わせることで将来の拡張性を高めた。
  4. プロジェクト全体の責任を持つことが唯一プロジェクトが成功する保証になる。プロジェクトを分割してアウトソーシングしたり仲介業者を入れたりするとプロジェクトが失敗するリスクが増える。
  5. プロジェクトの成否を分けるところに他者を入れない。自分たちの行動で成否の全てを制御できる状況にしないといけない。